「わたしのマンスリー日記」第10回 風にそよぐカーテン――『ありがとうMama』

「今日は外、涼しいですよ。秋ですね…」
 10月に入ったばかりのある日、日勤で来ているヘルパーさんが開口一番こう言いました。今年の記録的な猛暑もやっと終わったのかと思った途端、窓を開けて外気に触れたいと思いました。考えてみると、この夏は酷暑のため一回も窓を開けたことがないことに気づいたのでした。いやいや、今年の夏だけではないな。もう何年も自然な外気に触れていない気がします。
 年2回の定期検査入院で4週間は病室に、その他は全て自宅に閉じこもる日々…。そんな生活が続いて、早や5年が経とうとしています。その間外出したのはたった3回だけ。残酷と言えば残酷な話です。
 この原稿は窓を開けたすぐの横に置かれたベッドの上で打っています。時折そっと流れ込む風を受けて窓のカーテンが微かに揺れています。今、外の風を全身で感じている自分は幸せだと思います。自然にそよぐ風の何と爽やかで心地よいことか…!

 さて、今月のトピックは『ありがとうMama』。風に揺れるカーテンとは無縁です。が、これも「わたしのマンスリー日記」ならではの愉しみ方の一つだと言い訳しておきます。
 
 「ロックの女王」として知られるシンガーソングライターの白井貴子さんから1冊の本が届きました。『ありがとうMama』(カラーフィールド出版、2023年5月)。昨年、お父さん、お母さんを亡くし、さらに私と同じALSで病んでいた叔母さんを看送るという過酷な運命に直面しながらも、必死に介護した日々を描いたドキュメンタリーです。ロック歌手らしい率直でストレートな表現の中に、限りない愛と優しさが込められていて読む人の胸を打ちます。
 親を看送ることは誰も避けることのできない試練ですが、私たちはその悲しみを乗り越えて生きていかなくてはなりません。白井さんはエンジン01文化戦略会議の仲間の一人ですが、私がALSと闘っていることを知って送ってくれたものです。ありがとう! 以下はお礼の気持ちを込めた感想です。

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